2023年11月1日(水)親知らず
あっ、と気づいたら11月になっていた。六本木の二次会から酔った頭でどうにか帰ろうと頑張っていたら、なんでもない乗換駅で迷ったり、寝ないように集中してスマホを見ていたら乗り過ごしたりと、あぶなっかしく帰宅。いや、あぶなっかしいどころか、コンビニで新作のカップ麺を4つも買って、お菓子も買って、まだ何かやるつもりだった様子で、彼女に「太るからやめな!」と止めてもらったらしい。
自分ひとりの意志ではどうにかならなくても、彼女に言われるとすんなり(ではないかもしれないけれど)抑止ができるのは、一応でも心のなかに「まずい」という後ろめたさがあり、それを引きずり出してもらえるからなんだろう。結局、「悪い」とか「まずい」とか思っていないわけではないのだ。酒を飲むと、そういったものの優先順位が変わってしまうのかしら。うーん。
寝て起きて仕事。1日に4つもウェブミーティングがあると、なんだかあっという間に夜。彼女の親知らずの手術が滞りなく処置されて一安心。抜いた歯を持って帰ってきていて、それはそれはころんと立派で、きれいなものだった。これがとんでもない向きで、歯肉なり何なりで暴れまわると想像するだけで、親知らずの怖さを思い知る(とはいえ僕はもう抜いたのだけれど)。
しかし、なんでそんなシステムになっているのかはわからないものだ。歯の大切さを教え込みたいからなのか、親知らずってそもそもなぜこんなリスクばかりあるのか。何かが退化した結果か、それとも実は進化の過程なのか。あえてググらずにいま書いているけど、こういう想像力に答えをあえて出さないのも、案外と思考のトレーニングには良いものかもしれない、なんて思ったりもした。
2023年11月2日(木)傑作とは
最近なんだかやってもやっても仕事が終わらない気がしてしまう。だから余計な時間ばかりかかるし、原稿仕事も妙に時間ばかり食っている感覚がある。一つひとつのリードタイムが長いというか……。ちょっとうまく集中タイムなのか、何かしらを切り替えたい。明日から札幌に2日半ほど行くので、そこでの過ごし方や時間の使い方で、うまく切り替わってほしい希望がある。
北方謙三さんが出た有隣堂の知らない世界がすごく面白くて、そして「傑作」に関する言葉は超名言だった。傑作を書くぞと思わないこと。そして動画内で、北方謙三さんは小説に関しては手書き原稿を続けていて、万年筆を持って原稿用紙に向かうと「小説のための言葉」が出てくる、パソコンではそうはいかない、といった話をしていた。これも大変に興味深くて、同じような環境では出てくる言葉や思考に違いがあるのだとすれば、小説のための言葉を生むための環境づくりがうまく行けば、何かしらを書くこともできるのかもしれない。
2023年11月3〜5日 すすきの
アニソンクラブイベントの「きゃらそに」に参加する&すすきのでやっているスナックラウンジの様子を見に行く、という目的で札幌へ行ってきた。札幌で飲むサッポロクラシックが水化する現象(水のように飲める現象)は何度体験しても謎。
全然関係ないけど、あるツイートで「なんでこんなに日本の童貞率が高いんだ」という話を目にして、童貞であることは結果なので、そもそも過程に課題があるよね、というのを言いたいんだろうけど、そこに着目しないと作戦がずれるはず。見えるところのアウトプットについ焦点を当てがちだけど、本来的にはプロセスの問題ですよね、とは自戒的に思ったりした。
efとかネギま!とか、シャフトの昔の映像がむちゃくちゃかっこよかった。今見るほうがなおのことかっこいいかもしれない。トイレで立ち話してわかったけど「きゃらそにでないと得られない何かがある」「おれアニメ好きだったんだ!!という感覚」のことを話して、それはめちゃくちゃ稀有だよね。
5日は酒が詰まった体でどうにか飛行機に乗って帰ってきた。帰りの飛行機で、うつらうつらとしながら、とんでもなく勃起していたのは謎だった。体が危機感を覚えているから子孫を残そうとしたのだろうか。
そのまま荷物を持って、鶯谷の東京キネマ倶楽部で甘い暴力のライブを見て、東瀛で中華をつつきつつ、阪神タイガースの優勝を見届けたりしながらお酒を飲んで帰った。
2023年11月6日(月)50年先も
毎年、これくらいの時期に決まってご用命いただく仕事があって、今年もありがたくお受けした。「今年一年、どんなことがありましたか?」を聞いてまとめる、というのが仕事の主なところで、年表やファクトだけではなかなか見えてこない心境の変化や、自身の変化について、さまざまお話を聞く。あえてまとめよう、形作ろうとしないで、聞くだけ聞いてなんとかしよう、と思っていた。どうにかなるさ。
終わったあとで、もう毎年のことになってきたこの時間が、とてもよい時間であるという話の流れで、「このまま50年先くらいもこの仕事だけは続けていけたら良いね」といった言葉をかけてもらえる。すごく良いな、と思った。もし、僕がすっかりライターも何も廃業していて別の仕事をしていたとしても、この年末近くの仕事だけはしている。
そんな未来があってもいいし、仮に僕が海外に住んでいたとしたって、この仕事のために帰国するくらいでもいいなと思う。
2023年11月7日(火)紙パッケ神
コンビニで買った赤いワインのパッケージが牛乳を入れるような、正方形に近い形をしたもので、500ml容量だった。ボトルだと720mlが多いから少しだけ損したような気持ちになるが、何より紙パッケージだと飲んですぐ処分できる気楽さがあり、重くもなく、消費者的にはとてもありがたいものだなと思った。正直、家で飲むようなものは全部これでもいいかもしれない。
そういえば、秋葉原駅の構内にある牛乳スタンドにまつわる記事で、瓶牛乳と紙パッケージ牛乳では味が違う云々といった記述を見た気がする。赤ワインもそれなりに影響はあろうけれど、どれくらいのものか。軽くて簡単紙パッケージ小容量赤ワイン。普及するかな。
2023年11月8日(水)情報のレイヤー
黒鳥社のYouTube配信のアーカイブを見ていたら、若林恵さんが「オタク/ファンは何が好きか」と「音楽好きと言ってもレイヤーの違いがある」といった話をしていて、とっても腑に落ちた。
「音楽好き」にも音楽そのものが好きな人、ジャンルが好きな人、現象が好きな人などなど、音楽の「何が」好きかというのは異なる。音楽ライターという仕事でくくったとしても、その人は音楽の「何」について捉えたり重視するかによって見方も変わるだろう。
若林さんは音楽そのものは好きだという前提はありつつ、音楽の「情報」としてのレイヤーが好きなのだと言っていた。たとえば、あるバンドがあるバンドに影響を与えていた、とか、音楽的な影響をつなぐとこんな家系図めいたものができあがる、とか。音楽とミュージシャンにまつわる情報が好き、ということであれば、たしかに「編集」という仕事は自然と結びつくような気がする。
編集者とライターの違い、それはよく曖昧になったりするし、別にそれでも構わないところもあれど、大きなところでは「情報」のレイヤーが好きかどうか、というのは一つわかりやすい気がした。僕も「料理」に関しては情報レイヤーが好きなので、レシピ本を「使う」よりも「読む」ことに大きな楽しみを見出してもいるんだろうな、とか。
逆にいうと、どれだけ「料理好き」であっても料理メディアの運営の仕事がなかなかできない、みたいなこともありそうだ。
夜、ちょっと最近、もやもやしていたことを対面ミーティングをして一定で解消させることができて、ほっとした。便利だけど、オンラインのコミュニケーションだけではどうにも解決しないこともやっぱりちゃんとあるんだな、と思う。
一息ついてコンビニでサッポロ黒ラベルを買って飲む。清らかにのどを滑るビールに、札幌のしんとした空気を思い出しながら、キレの良い苦味が嬉しい。
2023年11月9日(木)イベントスタッフ
早朝5時に起きて家を出て、朝からとあるカンファレンスイベントのスタッフお手伝いとして出動。とはいえ、何か大仰なこともなく、むしろ「イベントの内容を一緒に見ていってほしい」というイレギュラーな立ち位置で、あとは何でも屋として小間使いしてもらいつつ、夜になるまで座学のようにトークセッションを見続けていた。
細かなことまで事前に決めても当日に何が起きるかわからない、というのがイベントの怖さもである。オペレーションをいかに構築するのか、という大変さと特殊スキルのあれこれを垣間見て、一定の訓練がいるよなぁ、と感心する。
イベントで出して余った瓶ビールを頂戴することになったら、思いの外、みんな持って帰らず(重いから仕方ないのだけど)、結局は僕が大きく引き受けて、両手の指にビニール袋が食い込むくらいにいただいてしまった。
帰りがけに彼女と待ち合わせて海鮮居酒屋で食事。たらの白子は天ぷらに限るね。もうすぐ北海道あたりで、まだちを食べられるのが今年も楽しみ。スカイツリーのトリトンにも行って、意気揚々と「まだち4皿ください」と言わなくちゃ。へっへっへ。
2023年11月10日(金)冷凍餃子
仕事で、冷凍餃子の開発者たちに、冷凍餃子の焼き方をレクチャーしてもらった。基本的には、パッケージの裏面通りに作ればよいものなのだけど、「中火」というのが自分たちが思っているものより弱かったり、餃子の羽をきれいに作るにはすこしテクニックが必要だったりと、パッケージの情報だけではなかなか十全にいかないことがあるもので面白い。それだけに開発者たちは苦労するものだけど。
世の中の人は、特に説明を読まないというのも全く珍しいことではなく、そして失敗もその情報を読まなかったことに起因するケースも非常に多いというのがわかってきて、あらためて何か苦言を呈したり文句を露出させたりする前に、自分の行いをちゃんと検証しているのかを気をつけないといけないよな、と思う。
意見を言うことに正当性はあるが、それが正当な意見とは限らない、というか。
夜に、自宅で焼き方を再現すると、今までよりもずっと美味しそうに、そして実際においしく焼ける。やったね。シソで巻いて、梅肉チューブをちょろっと塗ると、なかなかの肴に。
2023年11月11日(土)文学フリマ
朝から文学フリマの取材に赴く。すっかり現場的な仕事が無い中で、珍しく(?)ご依頼もあって、会場をあちこち移動したり、出展者の方と話したりしながら、文学フリマの盛り上がりについての所感や意見を貯めていく。果たしてどうまとめられるものか。
そういうゴールを明確にしないままに、「とりあえず行ってみましょう」という仕事は、正直に言うと手離れも悪いし労力もかかったりするのだけれど、自分が思っていたよりも遠くまで行けたり、広がりがあったりするので、後から振り返ると貴重な機会になることも多い。そういうものに仕上がればいいな、とは感じている。
とはいえ、どうにも急に寒くなったからか、心身ともにあまり良くなく、すぐに疲れてしまって、編集者には悪いことをした。そう思ってスマホの歩数計を見たら、1万6千歩近く移動していて、きっちり疲れるくらいには歩いていたことがわかる。
文学のはじっこのはじっこあたりにいる自分が、今の文学になにかを貢献できるのであれば、それはやっぱり良いことなんだろう。文学フリマに久しぶりに行って、自分もぼんやりとなにか作ってみたい気持ちにさせた。買ってきた個人誌や同人誌たちをめくりながら、ずいぶん感じていなかったワクワクがまだ戻ってくるようで。
2023年11月12日(日)続き
寝て起きて、また文学フリマ関連のインタビュー。自分の体感値に加えて、見聞きした話に、さらに違う観点からの話が加わってきて面白い。今、ここで何が起きていて、それがいったい何をたらしめようとしているのか、というのはどうにかまとめられたらとは思っている。まだ取材は続くので、しばらくは現地で買った本を読み進めながら、頭の中で文学フリマを引き続き開催しているような感じ。
宮崎県都城市からふるさと納税のさつまいもが届く。熟成紅はるか。買い続けて気に入って、今年もリピート。とっても甘くておいしいのだ。炊飯器で蒸し上げたこの芋に勝るものはなかなかない。多めに作って、朝ごはんがてらに1本ずつ食べるとちょうどいい。
2023年11月13日(月)レバニラ炒めのニラ抜き
部屋の片付けをしていると、本当はこっちのほうが気分がいいはずなのに、ずっとなんでやってこなかったんだろう、と毎回思うのをどうにかしたい。気持ちがしょげているときほど、こういう単調作業をするのに向いているはずなので、なーんか気持ちがどうにもならないぞ、と思ったときほど片付けをしよう。
夜、お誘いいただいて、菊川にある[生駒]さんで中華料理をたらふく食べる。佇まいも場所も、しっかり町中華という趣なのだけど、料理はどれもとびきり美味しく、箸も酒も止まらない。高級中華に匹敵する、という感じではなくて、親しみやすい中華の中でものすごく美味しい、という印象。お値段もしっかりお値打ちで、参加した人みんなで驚きながらにこにこ支払って帰る。これが「良い店」だなぁ。
誘ってくれたHさんが次の予約をして帰ったが、来年の3月だという。でも、納得といえば納得だった。お昼は予約なしで飛び込めるみたいなので、オープン前に並んで、ミニ純レバ丼+ラーメンセットをかっこみたい。期待しかない。
ちなみに「純レバ」はこのあたりでよく見る中華料理で、どうやらレバニラ炒めのニラ抜きで「純レバ」らしいのだけど、生駒の「純レバ」にはニラが入っていた。レバニラ炒めのニラ抜きのニラトッピングってことか。概念。
2023年11月14日(火)クセ
日付が変わっても、家に帰って、彼女をリビングのプロジェクターにV系ライブの映像を流して、ワイワイしながら酒を飲んでいた。酒とライブとプロジェクターの相性、良き。
いろいろ懸案していることの定例ミーティングの日。いろいろ懸案が少し進んだとは思うのだけど、今はまだにんともかんとも行かない。暗い話ばかりになってしまいそうなので、時たま明るい声を出したり、ちょっと笑いを入れようとしてしまったりするのは、僕のクセなのかもしれないなぁ、と思うなど。
2023年11月15日(水)言われてやっと
「おせち料理」をテーマにした取材と撮影があって現場へ。レシピそのものはすごくシンプルなのに「言われてやっと気づく」ということが料理にはあまりにも多すぎる。ふだん、そこまで一つひとつを考えられていないのもあるだろうけれど、やっぱり経験と場数がものを言うところもあるんだろうなぁ、と思う。
アボカドは半分にしてから、身の方から皮を切りきらないくらいに刃を入れて行けば、きれいにサイコロ状に切れる、とかね。
教わったレシピで、家で海老を焼いたら、とっても美味しくできた。こんな簡単なら有頭海老ももっと買えるわ。
2023年11月16日(木)同時並行
一日の中に3つも4つも予定があることにすっかり慣れているので、もう何も思わないのだけれど、多くの人はどこかの会社に勤めたりアルバイトをしたりして、一つのことに一つずつ向き合う、というのがよくあることなんだろう、というのを忘れがちになる。だから、今目の前にあることにそれぞれ専心しつつ、他にもいろんなことを片付けられるところからじゃんじゃんやっていかないと終わらない。
僕はマルチタスクな人間ではないと思っているけれど、それでもこのマルチ状態の生活を続けていると、それなりに対処法も変わってきているのかもしれない。だから、どうしても自分に重きを置くと「なんでだろう?」と仕事相手などに感じてしまうこともあるものだけれど、そもそも自分起点の頭になってしまっているから、なのかもなー。
あとはすっかりコロナ禍も踏まえて、全員が己の裁量を持ちつつも、全員が「暗に動いて共有する」という仕事の仕方に慣れている感覚があったので、それができないことがストレスになりがち。うーん、いろいろままならないな……。
2023年11月17日(金)通訳
久しぶりに通訳さんを挟んでインタビューをする。自分の質問をしっかり、手短に届けてもらわないといけないと思うと、言葉をなるべく絞ってまとめてから伝えないといけないので難しい。リズムも相槌も全然違うし。通訳さんに英訳してもらいながら、でも日本人の方にも質問しようとしたら、気が緩んだのか一気に質問がとっちらかってびっくりした。
「あ、あ、すみません、一度質問をまとめ直します」と言って仕切り直したけど、そこからしばらく言葉が出なくて、脳ばかり汗をかいて久しぶりに震えた。そのあと、なんとか絞り出した質問で場は進んだけれど、まじで冷や汗をかいた。経験値が足りないね…あといつもがちょっと甘えすぎてるのかもしれない。もっとスパッと、良い問いを、届けられるようになりたい……。
取材が延びてしまって、どうにかこうにか電車を乗り継いで夜は柏パルーザで甘い暴力のライブ。整番良かったのに入場はもうすっかり終わっていて、空いているところを縫って入り込む。だんだんモッシュで自分がいるほうにみんなが寄ってきてしまい、最後の方は身動きもできないくらいにぎゅうっとした感じに。あとで先に入っていた彼女に聞いたら「下手は空いてたよ」って。それは僕のいた上手に人が詰まったからですねきっと……。
本当はその楽な下手で堪能したかったなぁ、とちょっと悲しくなりつつ、これも打ち上げネタになると思って昇華する。終わってから、肉が食べたいリクエストをもらったので、彼女と肉バル(ここで飲んだハウスワインが多分合わなかったんだろうけど、翌日の壮大な頭痛を伴う二日酔いにつながる)で飲み食いしてから、高円寺のバーで二次会。
お客さん含めてあれこれ熱い議論を交わしたようでしたが、大丈夫だったかしら(記憶がしょぼい)。僕も、よく飲んだときの会話もしっかり覚えていることができれば、もっとエッセイなりなんなりの仕事ができるような気もするし、この日記ももっと面白くなるはずなのにな、と思う。タクシーで帰宅。気づいたら就寝。
2023年11月18日(土)二日酔い
ひどい二日酔い。二日酔いというよりはズキズキと頭痛がする(それを二日酔いと呼ぶのかもしれないけれど)。僕はあまり二日酔いになるタイプではないので、こんなに頭が痛いのは久しぶり。ええ〜……。記憶を辿ってもそんなに酒量が…?という気がするので、たぶん肉バルの赤ワインがよくなかった気がする。
あとはだって、ワイルドターキーの缶ハイボール(おいしい!)とかビールとか、あとはハイボール系だった気がするし……。
そんな感じで夜まで収まらず、結局はロキソニンを飲んだりしつつ、ほぼ一日中、ベッドでごろごろしていた。でも、よくよく思うと「休日」ってこういうときもあってもいいんだよな。なんだかんだ毎日仕事をしないといけないことが多いので、休日らしい休日にできていたのはよかった。あとは週明けの〆切含めてがんばります。
2023年11月19日(日)大阪
彼女に「ゴールデンレトリバーみたいだから髪の長さは今くらいのほうがいいよ」的な話をされた。犬っぽいらしい。犬っぽいのは親しみがあっていいかもしれない。それにしてもゴールデンレトリバーの大きさになるのか。自分の体の大きさを知らずにどーんと体当たりするようなことにならないようにしないと(精神的にも)。
日曜日は新幹線に乗って大阪へ。キズの単独公演「鬼」を、大阪のゴリラホールで単独参戦で鑑賞。整番が結構後ろで、見事に下手後方くらいにしか行けなかった。周囲はバンギャっぽくない人も多くて、この人たちはどこの情報経由でキズに来てるんだろうなぁ、と興味がわく。キズの面々は相変わらずかっこよくてよかった。
終演後は何をすることもなく、大阪のサウナDESSEを体験して、なかなかの充実度合いに「東のサウナス、西のDESSEだな」なんて心でつぶやいたりしながら、ラーメン屋でビールを飲むなどした。誰も自分のことを知らない飲み屋で、ひとりでビール瓶を傾けているときのきもちよさって、あるね。
2023年11月20日(月)生活綴方
大阪のホテルで起床。それなりに飲んでいたが何とか起きる。ホテルのすぐそばにあったおしゃれな立ち食いそば屋で和牛肉そばをすすった(つゆがおいしい。関西のだしもいいよね、飲み明けの体にすーっと入ってくる)。新幹線の時間まで少しあったので、歩いて移動する。天神橋商店街に行きたいお店があったので、てこてこ散歩して景色や空気を楽しむ。
途中、立ち寄った「天牛書店」という古本屋さんが外観からして期待が持てる空気で、一歩踏み入れて「あっ、いい感じ」と思えたところだった。さまざまなジャンルも網羅して、高価な本も展示されていて、心が上がる。荷物をそれほど増やせないと思いつつ、2冊だけ買う。
そのうちの一冊が、青空文庫創設者の富田倫生の『本の未来』で、内容はインターネットとデバイスの進化で本はどうなるかという、書かれた1997年当時を思えば、こういう方向性もあったかもな〜という回顧と未来からの答え合わせのようで面白かったのだけど、読んでみると「生活綴方」という教育運動に触れている箇所があり、それがすごく良い学びだった。
辞書を引くと「1910年代に入る前後のころ以降日本に現れた,子どもの生活全体の指導を目的とする教育方法,もしくはその指導過程に生まれる子どもの文章表現の作品をいう」とか、「生活人としての子どもや青年たちが、生活のなかから発見したこと、考えたこと、感じたことを生き生きと表現した作文。また、これを推進する活動をもいう」とか書いてある。
書きながら考え、書き上げたものをさらして批判を受ける。そこからもう一度考えていく中で、自分自身を高め、状況に働きかける力を養っていく。
生活綴方が目指したこうした精神の作用は、人を書くことに向かわせる主要な動機の一つでしょう。誰かの高説を借り、論理のはしごに上って高みから説き起こすかわりに、自分自身や、置かれている状況のありのままを見つめるところから始め、そこから書き出す方法にも、単なる方法論以上の意味があると思います。
──富田倫生『本の未来』p,45
これはまさに、昨今感じている日記の効用みたいなことにもつながりそうだ。もう少し掘ってみると何か見えるかもしれない。
と、天神橋商店街のお目当てのお店は定休日で、ぎゃふんとなった。どうして目に入っていたはずなのにチェックし忘れたのかしら。ぼんやりとしたまま帰京する。
2023年11月21日(火)苦手なまま
夜、広報・記者交流会という集まりが開催されるということで、渋谷まで出かけて行く。この会自体がリアルで行われるのが4年ぶりで、私はもうすっかりメディア記者の立場ではないけれども、何かしら仕事なり発見なりにつながるとか、久しぶりに知らない人だらけのところで自分を置くとどうなるかを体験したかったりとか、いろいろの思惑を持って出かけていく。
が、人間そんなに大きく変わるものでもなく、基本的に人見知りで知らない人にほいほいと話しかけるようなタイプでもなく、飲んでいる酒はどうにもビールや薄いハイボールで力を借りることもできず。いくつか流れでご挨拶できた人と、ぽつぽつと会話。それにしても、何でも屋のように仕事をしているので「どんな記事を書いているのか」「何が得意なのか」というお決まりの質問にあたふたしてしまうのも相変わらず。わかっているなら用意をすればいいものを、まったく色々と準備不足で甘えているのだろう……。
それもこれも、結局、自分よりも下の世代で、めちゃくちゃ色々やっている人とかが出てきていない(環境的にも、たぶん時流的にも)というのに甘えているだけで、すっかりすぐに地盤沈下が起きるところに僕はいるのかもしれない。見聞や人脈を広げるところが、なんとなく不安が大きくなって帰ってきたのだった。こういうときの渋谷は、とくに寒くて、冷たい。
すれ違う人の目つきがみんな鋭く思えて、疲れを感じる。帰って、彼女と大阪土産の赤福を食べ、すこし回復。机の向こうで、甘さと美味しさにもだえる様が、いと愛し。
2023年11月22日(水)
メモも記憶もなし。カレンダーを見ると、朝と夕方にいつもの打ち合わせがある。おそらく何かしらの仕事を進めたりぼんやりしたんだろう。深夜につるまいかだ『メダリスト』9巻を読む。描写、展開ともにさらにヒートアップし、もはや現実のスポーツを観ているかのような興奮。
2023年11月23日(木・祝)
遠方に住んでいる弟が仕事で東京に来ていて、我が家にも寄ってくれる。ひさしぶりに昼飯を一緒に。元気そうでよかった。実家にも顔を出さないとな、出したいな、と思ったまま一年経ってしまっているかもしれない。よくないな。
夕方、トーキョードームシティホールで、アルルカンのワンマンライブ観る。造りが日本武道館のように感じて、彼らがさらに大きくなって、目標とするそのステージに立つ日も来るのだろうか、とワクワクしたりする。ライブは良かった。でも、最近小さめの箱で彼らを観ることが多かったから、体験としてはちゃんと「ライブを観たな」という感じで、沸き立つよりも鑑賞した、という。
彼女とそのまま飲みに繰り出し、神保町で焼肉を喰らい、帰りに途中下車してシーシャを吸ったりする。シーシャ、なにげに久しぶりでおいしかった。なんだかんだで僕らの起源的なところもあるアイテムなので、彼女とシーシャを吸うと、すこしセンチメンタルに、なつかしく、穏やかで、それでいてどきどきとする気持ちになれる(あと単純に久しぶりに吸って喰らってるのもきっとある)。
2023年11月24日(金)ぴったり
Amazonポイントを何気なく使ってみたら、残額のお尻が綺麗な数字になっていて嬉しい。6369から5000になった。こういう小さなことってメモらない限りは忘れてしまうものだけど、日記のために書いてあった。小さなしあわせというか快感も日々には大事だもんね。
2023年11月25日(土)うーん
なかなか仕事はらどらず。自分の仕事がはかどらないときほど、他人の仕事がよく見えてつらい。
2023年11月26日〜28日(日〜火)誰かがつくったもの
3日間、札幌へ。Wさんが「ワーケーションしたい」と言ったので、僕も札幌のお店に顔を出したりしたいのもあって、一緒に行くことにした。美味しいものを美味しく食べたり、いくらをバサバサかけてくれるようなちょっと観光客寄りのお店に堂々と行ったり、ホテルについたサウナにたっぷり入ったりしながら、のびのびとすごす。
どうでもいいバカ話もたくさんした。日記用のメモに「環境が生み出す天然マジックミラー号こと多摩川土手」と書いてあった。本当にどうしよもない。たぶん、夜の多摩川土手は暗いし周囲からも見えないので、青姦してもバレないのでみんなよく使う(らしい)。
モエレ沼公園にも初めて行って、雪が積もる道にめげずに、モエレ山を登ってみる。パーっと頂上から街を見下ろすと、すべてこれは誰かが開拓し、屯田兵たちが拓いたのか……という感慨が湧いてくる。妙にジーンとした。「人間が生きる理想的な環境の配分」があるのではないかと話して、緑や水源の割合と、道路と建物と、実はぎゅうぎゅうに作る都市は人間のためにはなっていないのかもしれない、なんて思う。そういう都市計画あるんだろうか。
夜食みたいな時間に、空いていたホットドッグ屋が、ウェイトレスさんにあだ名が付いていた。「フェンダー」という子がいて、でも彼女自身はあまり音楽やロック好きというわけでもなく、負わされる名前の重さがたいへんそうだ。
なんだか、酒を飲むといろんなことに腹が立ってくるのは、本当は思っていても言わないようにしている僕の無意識が表出するのかもしれない。アルコールが人を変えてしまうのではなくて、実はエゴでわがままで己の正義感や義務感がある自分を知る、というような。
2023年11月29日(水)
亀田製菓のカレーせんべいをひさしぶりに買う。亀田のカレーせん、ほんとうにいっちばん美味いよ。
2023年11月30日(木)
夜はV系バンドのRAZORのライブを観に、渋谷O-EASTまで行く。前半はステージが広い割にメンバーの動きが少ないせいか、ちょっと小さく見えたな。あとは、言葉でドキドキする性格だから、歌詞がうまく聞き取れない歌は初見みたいに聞くと、結構ぼくは寂しいのかもしれない。などなど。
ライブは尻上がりによくなっていった印象があった。ファンのヘドバン気合い入っててよかったしサークルモッシュもスムーズだった。かっこいい。
ただ、メンバーの名前を呼ばせるゾーンが多くてちょっと胸焼け。自分でも「承認欲求が強いんだよー!」って言ってたけども。あとは映像化するのでカメラが入ってたらしいけど、映像化するならメンバーMCも良いこと言おうと何か用意しておけばいいのに、なかなか薄味というか、あまり刺さらず。
なんというか、名前呼びMCもそうだけど、僕らはお前らを気持ちよくさせるためにライブに来てるわけじゃないんだぜ、という前提が微妙にズレてる気はした。考えすぎかもしれないけどね。そんなふうに概観できるのも良い機会でした。
この日記、ぜんぜんリアルタイムで書いていないのだけど、メモとカレンダーがあれば、何かを思い出して拾い集めながら書けるんだなぁ。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。編集者・ライター。「生活技巧」発行者。