2023年10月26日(木)上手に話せない
最近どうもすこぶる調子が悪くて、仕事もはかどらないので、酒を飲む量が増えてしまっていた。昨日もそんな感じで夕方から飲み始め、久しぶりに赤ワインに手を出し、気づけば1本飲み終えていた。
彼女が仕事を終えたあと、一緒にひと駅ぶん歩くことにしているのだけど、近場のスーパーに寄ってもう1本赤ワインを買う。まったく良くない兆候。結果、さらに缶チューハイだか何かと赤ワインをボトル半分飲んでしまう。そして、彼女に日頃言えなかった文句をつらつらとぶつけてしまった。やってしまった。
酒に飲まれずとも、力を借りずとも、胸の内をうまく話せるようになりたい。彼女に限らず他人を目の前にすると、自分の言葉で何かを示すのがすごく難しく感じる。しかし何も思っていない訳では無いので、いざLINEなんかで文章で伝えようとすると長文になる。いつからこんなふうになったのかわからないが、変えていきたいことの一つでもある。
これではすっかり昨日の日記だ。起きて、重いからだを太陽に晒しながら、縁側に座ってトマトジュースと飲みかけの赤ワインを混ぜて沸かして、カップヌードルチリトマトに入れたものを食べる。重たくて結構にうまい。濃厚というよりは全体的にもったりしている。
家でオンラインミーティングや作業系の仕事。あまり捗らず。復活した姫乃たまさんの日記がすごく面白くて、影響されて僕もまた日記を書き始めてみた22時。原稿は白いが、日記が増えるのは嬉しい。これも話す練習なのかもしれない。自分の考えをまとめたり、何もないように感じられる日々を形にしてあげたりすることが。
書き始めたら10分もかからずにここまで来た。なんだ、難しいことじゃあない。どれだけ原稿が忙しくても書くことができるくらいにライトなんだ。姫乃たまさんみたいなエンターテインメントな面白みはないけれど、まずは久しぶりに、僕は僕のために日記を書いてあげようと思った。
2023年10月27日(金)順番
自分の日記を読み直すのが好きだ、と気づいた。書いていない期間にも、時折はこのサイトを開いて、同じ月のものをだらだら読むことがあって、数年前の自分と変わったり変わっていなかったする様を見て、ちょっと笑ったり思い出したするのが楽しかった。ある意味ではセルフケアのようなものかもしれない。ちゃんと生き延びているよ、あんまり成長していないかもしれないけど(ごめん)みたいに。
で、読んでいて思ったが、今まではずっと日記を書く順番を日付で降順にしていた。これはいにしえのテキストサイトの日記たちがたいていそうで、毎日のように更新をのぞきにいくのであれば、こういうほうが更新がわかりやすかったからだと思うのだけど、別にこの日記はふつうに後から読み直すことを考えれば、昇順のほうがよっぽど読みやすい。ということで、この日から変えてみている。
今日は、池袋BlackHoleというライブハウスに行った。知っている人が出演するからだったけど、いわゆるまだまだ売れていないV系バンドが何組も出てくるようなイベントで、150人くらいは入りそうなライブハウスも全体で30人くらいいたのかどうか、という感じで、逆に新鮮だった。好きで追っかけているバンドたちは十分に売れていたこともあってか、もっと人はいつも多かったから、「そういえばそうか」と。
ただ、知らない曲や知らないバンド、知らないお客さんだけに、妙に想像力がはたらいている自分がいた。彼らの曲や頑張りに注力しすぎなくていいからか、後ろから見ていても、最前席(席というか列か)に数人いる全力でヘドバンなり柵ダイブなりをしている人を、すごく好ましく見てほっこりしたり。
で、出演者として待っていた私のバンドは、ゆっくり活動をしているらしくて、実に半年ぶりのライブだと言っていた。でも、もちろん全部オリジナル曲で、僕は音楽の細かなことはわからないけれど、すごくカッコよくて眩しかった。とても楽しんだ。何よりステージの人たちが楽しそうでよかった。
僕は、その知っている人が顔も雰囲気も個人的にファンで(バンドマンである彼の姿を見るのは初めてだった)、そんな彼が楽曲中にパッと開かせる笑顔は、ふしぎな脳汁がスイッチ出る感じだった。あぁ、これがバンドマンに心ときめく子の心理に近いのかもしれない、なんて思っていた。
実は年齢も同年代だったので、こんなにかっこいい姿を見られるのってすごく大事だなとも。音楽の、というかバンドマンの効用だな。
ただ、体の疲れはあったので、イベントは途中で出ることにして、すぐ近くの池袋プラザで90分くらいのサウナルーティンを決め、何を食べたいのか決めあぐねながらコンビニで酒を買って飲み始めてしまい、結局うろうろしてしまった。いいや、と家に帰ろうとしたらいつもと違う電車に乗ってしまい、すこし遠くの駅で降りた。駅前にあった煮干しラーメン(おいしかった)と瓶ビールとおつまみメンマを楽しんで、そのまま1時間弱くらい歩いて帰った。空気が冷たくなってきて、最近は歩くのがまた心地よくなってきた。
かっこいい姿にはほど遠い自分を思いながら、僕がかっこよく見せられることって何ができるんだろう、と想像したりした。答えはとうにわかっていて、書くことしか今はないのだけれど。
2023年10月28日(土)ハンバーグおいしい
「ハンバーグが食べたい」という彼女のリクエストに応えて、昼時のガストへ行く。たまに行くファミリーレストランのワクワク感と言えばすごい。もとからあまり外食するタイプではないから、どこへ行っても楽しめることが多いのだけど、中でもファミレスの「なんでもあるし、何でもできそう」という全能感が好きだ。
店内はとても賑わっていて、家族連れもいれば、お一人様利用もいた。それなりに広いお店に見えたけれど、ホールスタッフは2名しかいないようで、ほとんどが戦場のキッチンにいるみたいだった。配膳の猫ロボットもすっかり馴染んでいるのか、僕らのもとにも何度もやってきてくれたけど、全くストレスなく行き来していた。配膳ロボのおかげでホールスタッフも減らせているんだろうかな。
おかげで、店内の賑わいとは打って変わって、料理はすごくスムーズに提供されてきた。ハンバーグとからあげをたくさん食べた。クーポンを使うと生ビールも半額というすごいキャンペーンをしていたので2杯飲んだ。結局は定価じゃないか、という落ちだけどアルコール量は2倍だ。何を大事にするかで、この愚行の価値は変わってくる。
ガスト後は、彼女はV系のライブを見に行き、僕は家で仕事をただしていた。現地からの彼女のレポートLINEを面白く読んだり返したりしていると、すっかり夜。駅まで歩いて行って、すこし買い物をしてから、家に帰ってお酒を飲んだ。電子レンジでお魚が焼ける調理器具を昔に母からもらっていたのを最近思い出して、あらためて使ってみたらしっかり焼けるし、すごく便利。ぶりの塩焼きは良い肴。
「それ、お母さんからもらったって言ってなかった?」と言う彼女の記憶力にすごく感心したのだった。僕は昨日のこともすぐ忘れてしまうくらいに日々が溶けていくけど、「あったこと」は妙に覚えているから、日記に書いておいてトリガーにするのは結構大事なんだろうな、と思い直す。この文面を見れば、いつかの自分が「あっ、電子レンジで魚を焼けるやつ持ってるじゃん」と思い出すかもしれない。
2023年10月29日(日)ベジマイト
日中は書き仕事。あまり捗らず。すると、料理研究家のOさんが「最近、レシピ開発とかで余った食材が増えてきたから、料理するので食べに来ない?」というお誘い。なんてありがたいのかしら。美味しいご飯も食べられるし、晩ごはん代も浮くし、原稿もなんとかなりそうだったので、喜び勇んで出かけていく。
途中で、酒の品揃えがよいスーパーがあって、基本のビールに加えて、日本酒も四合瓶を2本。三重の清水清三郎商店の「作(ZAKU)」があったので嬉しく買ったが、結局、お酒代だけで5千円近くになってしまい、全く節約でも何でもないのだが良しとする。
その会には、Oさんのワイン勉強会仲間だという人たちも来ていて、男ばかり5人で美味しいごはんとお酒の時間を過ごす。初めましての僕もいるが皆さん優しくて、LOVOTに興味を持っている人がいたので、ひとしきり魅力を力説したりする。
「神奈川県の高校球児はなぜ多くてあんなに競合揃いで大変なのに2部生じゃないのか、といえば、規定で同一県内で200校を超えてないと分けられず、神奈川は少しだけ足りないままが続いている。北海道が分かれているのは距離が遠すぎて移動できないから」
「鶏の茹で汁でだしパックを煮て、味醂と塩で調味したうどんだしがめちゃくちゃうまい(確かにうまかった!)」
「鶏肉の基本の焼き方は、鳥の1%重要の塩で揉んでから5分ほど置いて水分を拭き、少ない油で皮目から焼いてたぬき色を目指し、ひっくり返してすこし火を入れるでOK(確かにうまかった!!)」
「鶏のてりやきは、焼いた鳥を、砂糖・酒・醤油を合わせたタレで絡める感じで仕上げるとおいしい(確かに!!!)」
などなど、僕が料理のことに興味があることもあって、面白い話がいろいろ聞けた。そのうちの一つに「オーストラリアで定番のベジマイトは、パンに塗ると激マズだが、中華調味料として見ると豆鼓のように使えておいしい」という話があった。そこから、実際にオーストラリアへ留学していた人の思い出話なんかも膨らんだのだけど、それよりも、やはり気になるベジマイトの中華利用。そのイメージを持ってから舐めてみると、独特の発酵臭や味わいは、中華寄りなことが見えてくる。チャイナロードが目の前に開けていった。
まだ買ってはいないのだけれど、いずれ試してみる気でいる。栄養価もあるし、ベジマイト中華が流行る可能性も秘めていそう。
話題の中で、酒も入っていた僕が口を滑らせたこととして、オンラインサロンなんかで「効率化したい」という人はよく見るが、その人たちは「非効率をちゃんと知っているのか」と問いかけた。初めて考える話だったけれど、要は最初から効率化したいと思っても、「何が非効率かわからない」のであれば、単に手法を真似するしかないのでアレンジがきかないし、それは「効率化」とは言わないのではないか。
言葉遊びのような気もするけれど、非効率とか、無駄とか、そういうものを知っているからこそ効率化への欲求も必要性も生まれるはずだし、ときには非効率や無駄の中にこそ光るものがある。それらをどこかで避けてしまうのは、実は効率化を求めた弊害として表れることもあるのではないか、という気がしている。なんだか全然に具体的でないけれど。
2023年10月30日(月)厚揚げ麻婆豆腐
彼女の仕事が終わって帰ってくるのが23時半くらいなので、そうなったら歩いて駅まで行って、一緒に帰るようにしている。せめて一駅分歩こう、という習慣づけ。いつから始めたか忘れてしまったけれど、まだ夜がすごく暑かった頃もあったから、きっと夏のうちだろう。
取材がなければ一日中デスクの前というのも珍しくないせいで、とても良い機会になっている。しゃべりながら帰る時間も持てるし、遅くまでやっているスーパーで食材やお値引き品を調達できるし、ちょっとお酒なんか飲みつつ歩いてることもある(そうなるとダイエット効果は虚しく去るのだけども、夜に飲みながら歩くのはとても楽しいことなので、それはそれで良いのだ)。
今日は彼女が「飲みたい!」と言い、缶のお酒と赤ワインを買って帰る。明後日、彼女は親知らずの手術があるので、そうなるともうまた腫れが引くまで飲めないからだろう。どうやらそれ以外のストレスもあるようで、そんなときは確かにパーっとしたくなるのもわかる。
家の冷蔵庫に、お値引き品でゲットしたあれこれが少し溜まってしまっていた。計画的に買うような献立作りをしていないせいもあるが、どちらかというとお値引き品は「これ安いならいいね〜」という会話をしたかったり、ちょっと得した気持ちを分け合いたかったりして、買っている気がした。
そんなものたちを、わーっと調理した。豚ひき肉はミートボールにして、砂肝となすと一緒にトマト缶と赤ワインで煮込みに。厚揚げは玉ねぎと舞茸と一緒に麻婆豆腐の素を使って炒めた。麻婆豆腐、CookDoの新しい「極」がとても美味しくてリピート。厚揚げ麻婆もなかなかイケる。食べごたえもあるのでお酒にもぴったりだ。
作り置きとして分けつつ、それらもつまんで、しゃべりながらお酒を飲んだ。次の日が早かったけど、なんだか楽しくなって、それなりに遅くまでやっていた。朝見たら、彼女が甘い暴力の『愛の地獄』を歌いながら踊っている動画が出てきた。ごきげんでなにより。
2023年10月31日(火)串揚げ
伊集院光さんがラジオで、子どもの習い事を増やそうかと迷っている親に「何か苦手なことがあってもいいんじゃないの」と言っていた。全部できるほうがいいだろうって親心のは気持ちはわかる。でも、たしかに苦手なことも個性ではあるし、何か一つくらいは苦手だったほうが、人としての可愛げみたいなものは生まれるのかもしれない。
……なんて思えるのは、いや僕が大人だからだろう。子どものときの苦手意識の芽生えと、それを仮に周りからいじられて引きずるくらいなら、そんな経験はないほうがいいよなぁ。
夜、お誘いを受けて西麻布にある会員制の串揚げ屋さんへ。なんで呼んでもらえたんだろう、とふんわり思いつつ、気にしすぎずお酌をしたりされたりしながら、串揚げと日本酒。いくつか出てきた酒肴でも「壬生菜の漬物にライムをしぼったもの」がすごく良かった。すぐ真似したくなる美味しさ。漬物と柑橘ってイメージがない気がしたけど、今書いてて思ったのは「大根とゆず」があるな。
早めに始まったので時間もあって二次会へ。久しぶりにawabarなんて行った。壁一面にスタートアップのステッカーが貼ってあって、実に懐かしい気持ちになったのだった。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。編集者・ライター。「生活技巧」発行者。